棍棒飛ばしチーム加盟要件

 全日本棍棒協会では、棍棒飛ばしチームの協会への加盟に際し下記の要件を設けることとする。また今後、全日本棍棒協会が主催する全ての大会は、加盟チームのみが参加できるものとする。

 加盟要件

  1.  5名以上(内女性1名以上)の選手[*1]がチームに所属していること。
  2.  市町村以下の範囲でホームタウン[*2]を設定し、当該地域内でホームグラウンド[*3]を確保していること。
  3.  ホームタウンに設定している地域の名前(市町村名、旧市町村名、地区名など)をチーム名に組み込んでいること。
  4.  チームの半数以上の選手がホームタウン在住であること。
  5.  企業の所有するチームでないこと。
  6.  2ヶ月に1回以上の頻度でメンバーの半数以上が参加する練習を行っていること[*4]。
  7.  チームとしてホームタウン内の山林整備に関係している[*5]こと。

*1 選手とは、実際に試合に出場できる人間を指す。
*2 ホームタウンとは、そのチームが本拠地とする地域を指す。
*3 ホームグラウンドとは、自由かつ安全にプレーできる棍棒飛ばし専用の土地を指し、大きさは5m×20mを最小限とする。公営のグラウンド等はホームグラウンドたりえない。
*4 練習は必ずしもホームグラウンドで行う必要はないが、半年に1回以上練習で使用しない土地はホームグラウンドとは認められない。
*5 山林整備とは、生物多様性ある山林環境を目指した営みを指す。また、それに関係しているとは、山林整備に継続的に従事ないし支援していることを指す。

要件7について
 棍棒飛ばしは全日本棍棒協会が考案した競技だが、全日本棍棒協会は里山制作団体つち式を母体として生まれている。つまり、この競技はその誕生の経緯からして里山と不可分である。事実、棍棒は豊かな山林環境を背景としなければ成り立たない。そして現在、多くの地域で里山はその豊かさを失いつつある。したがって、棍棒飛ばしをプレーするチームはすべからく里山ないし山林の整備を行うべきだ、というのが全日本棍棒協会の見解である。
 たしかに厳しい要件ではある。もちろん我々とてこの競技を普及させたくないわけではない。けれども、無邪気に棍棒飛ばしだけに興じていられる状況でないことは明白である以上、山の問題を無視することはKONBOUプレイヤーシップに反する態度だと言わねばならないだろう。だいたい、これしきの厳しさをクリアできないチームが厳しい競技の世界において何事かを為せるはずがない。我々は、上記全ての要件を充した諸君とハイレベルな試合を行うことを心待ちにしている。

加盟申請は、所定のフォームに記入のうえ全日本棍棒協会に提出すること。
https://forms.gle/DQNsDhbiwuJPwjHB7

チーム結成案内

 木々をわたる風にも、そこはかとなく秋の気配を感じる頃となりました。国民の皆様方には日頃より棍棒飛ばしにご理解・ご協力を賜り、至極当然のことだなあとしみじみ感じております。
 さて、棍棒飛ばしは紛うことなき国民的競技なので、自分も始めたい、チームを結成したいと思っている人も多いと思う。ここではそんな人に向けて棍棒飛ばしの始め方を指南する。


本記事は、『こん棒飛ばし大会のしおり』28‐29頁と同じ内容であるが、誌面にミスがあったため正確な内容を記すとともに、修正版の画像とpdf(末尾)をここに掲載する。


 棍棒飛ばしを始めるにはまず、①棍棒と②場所と③人——この三つを確保しなければならない。

①棍棒
 棍棒飛ばしをするには当然棍棒が要る。『棍棒入門』には作り方を載せているのでそれを見て自作するのもいいだろう。というか、全日本棍棒協会としては自作の棍棒でプレーすることを推奨している。ただ、自作するには材料の木を手に入れなければならず、棍棒を作る野外の作業場もなければならない。さらに、最低でも殴打棒は1本、撃墜棒は4本要り、おまけに被打棒はカシ製でもその内折れるのであればあるだけいい。作るのは大変ではあるものの、自作した棍棒には愛着が湧くし、それで活躍できた時は歓びも一入だろう。もっとも一応、全日本棍棒協会では競技用棍棒の販売もしている。

②場所
 棍棒飛ばしをするにはまあまあ広くて平坦な場所が要る。しかも、被打棒が飛ぶので四方に建物などがない所でなければならない。このような条件を充たせる場所は都会では望むべくもないし、田舎であっても実は難しかったりする。となると市営グラウンドを借りるくらいしか選択肢がなくなるが、いちいち借りるのは面倒であるし、棍棒飛ばしのような競技が禁止されている可能性もある。だからやはり、いつでも自由に心置きなく棍棒飛ばしができるホームグラウンドは是非とも必要だろう。ちなみに本部チームでは耕作放棄地を整備して使っている。

③人
 棍棒飛ばしをするには(チームとして活動するには)最低でも5人の人間が要る。しかもその内1名は女子選手でなければならない。5人以上の動ける人間を集めるのは地域によっては難易度が高いかもしれない。それに、棍棒飛ばしをしたいと言い出してそれに乗ってきてくれる人がいるかは、君の普段からの人間関係や人望の有無にかかっているところがあり、残念ながら気持ちの強さだけではどうにもならない場合もある。また、たとえ5人集められたとしても、継続的にチームとして活動するにはメンバーが近隣に住んでいる必要もある。練習場所まで遠ければ遠いほど、彼の出席率は下がり、その内億劫になって来なくなってしまうだろうから。

 以上の三つを揃えられるかは君がどこに住んでいるかによるばかりか、人望や運や体力があるかどうかも関わっている。難しさばかりを並べてしまったが、棍棒飛ばしをするにあたってこれらはどうしてもクリアしなければならない課題だ。もし君が熱い想いを持っているならば、置かれている境遇がどうであれチーム結成へ向けて少しずつでも動き出してほしい。我々は君のチームと対戦できることを心待ちにしているし、できるかぎりの支援はするつもりだ。とにかく、君もチームを作って全国大会を目指そう。

全日本棍棒協会では、本部チームへの体験受け入れ、出張指導(3万円~)、棍棒飛ばし入門動画の作成、等々の棍棒飛ばし普及活動を実施する予定である。専用フォームから個別の問合せも可。

なお全日本棍棒協会では、棍棒飛ばしチームは地域密着であるべきという方針から、加盟に際して下記ホームタウンに関する規定を設けることとする。

ホームタウン規定
・ホームタウンを設定すること(市町村以下の範囲)。
・ホームタウン内でホームグラウンドを確保すること。
・ホームタウンに設定した地域の名前(市町村名、旧市町村名、地区名等)を必ずチーム名に組み込むこと。
・棍棒飛ばしで使用する棍棒は、可能な限りホームタウン内で採取した木で製造すること。
・チームは可能な限りホームタウン内在住の選手で構成すること。


棍棒最高ピエエエエエエエエエイ

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なぜ棍棒を始めたのかという質問が後を絶たないため、会長の東樫が「大棍棒展」後に自身のnoteに書いた文章を転載する。焼け石に水だろうが。
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 大棍棒展が大盛況のうちに終わった。それ自体は喜ばしいことである。だが、会場では「なぜ棍棒を作ろうと思ったのですか?」というような質問を幾度となく浴びた。毎回わたしは、嘘ではないものの自分自身としては釈然としない理由を口籠もりながら答えた。「昔から畑の杭を打つために簡単な棍棒は作っていて」「少し前から木を切る仕事を始めて色んな木が手に入るようなって」云々、等々。なるべくありえそうな、聞き手が納得できそうな要素を記憶の中から引っ張り出してきた。なぜなら、もしわたしが「それが最高だから」としか言わなければ、聞き手の棍棒を受け止める余地を狭め、今後の棍棒の普及の障壁になりうると思われたからだ。——この物言いにも演出が含まれている。結局わたしは、自分のしていることについて少しでも興味を持ってくれた人が投げかけた質問に対して、相応の答えを投げ返そうとしてしまう性質なのだろう(それが上手くいっているかは別として)。あるいはこうも言える——こうした類の質問はたいてい社交辞令として発されるため、礼儀の型としてそれなりの応答をするのが自然であると判断する人間にわたしも含まれる。それにしても、棍棒という無骨で野蛮な代物を作り、全日本棍棒協会を立ち上げ、その会長を名乗っている身としては実に恥ずべき態度だと言わねばならない。「棍棒が最高に決まってるからやろ、しばくぞ」と答えるべきだったのだ。

 実際のところ、わたしが棍棒を始めた明確な理由は自分でもよくわかっていない。棍棒を本格的に作りはじめてまだ一年も経っていないのに、その動機を探って当時を思い出してみてもそこから何かを持ち帰れたことはない。同じ失敗を何度か繰り返すうち、わたしが棍棒を始めたというより棍棒がわたしのもとに不意にやってきた、と言うのが正しいと思うようになった。そうであってみれば、「わたしが」「始めた」明確な理由がいくら探し回っても見当たらないことにも合点がいく。わたしは向こうからやってきた棍棒を手にしただけである——棍棒が目の前に転がってきて握らない手があるだろうか! だから、なぜ棍棒を始めたのかをわたしに訊くのではなく、「なぜ彼のもとにやって来たのですか?」と是非とも棍棒に尋ねてみてほしい。

 冗談はさておき、この世界は、信じられないほど巧妙に作り込まれているにしては笑えないことが多い冗談みたいなものである。我々はみな有無も言えないままこのタチの悪い冗談の中に放り込まれているわけだが、それなら当然、せめて愉快に生きる権利が無条件に与えられていて然るべきである。理不尽の見返りには相応の待遇が準備されているのが道理というものだろう。しかし、そうではなかった。この世界はどこまでもふざけている。自分の境遇について不服を訴えたところで何がどうなるわけでもなく、無為に過ごせば野垂れ死に、生きれば苦難が降りかかる。まったく、実に、ふざけた話である。冗談がきつすぎる。納得いくわけがない。だからわたしは、おとなしく生きたり死んだりする気はない。わたしは怒っている。いまだに生きつづけているのは怒りつづけているからに他ならない。世界がその気なら、こちらも死ぬほどふざけ倒し、完膚なきまで楽しみ尽くす所存だ。この大きく悪い冗談のごとき世界に対抗して盛大な笑える冗談をぶち上げること——それ以外にわたしの生きる目的はない。そこで問題は、どうやって世界を出し抜いて楽しむかであり、どうやったら出し抜いていることになるのかということだ。いくら足掻いてみたところで全てはこの世界の中の出来事だし、材料もこの世界のものしかない。過剰にやるのはいい手だとは思うがそれも織込み済みだろう。この世界から独立することなどできない相談だ。けれどもこの世界という否応ない制約は、それが意地が悪くも強固なだけに、逆に我々の冗談が上滑りすることを防いでくれる。この如何ともしがたい構造は、だから我々にこの世界を作り返す余地をもたらす。この世界が我々に制約を与えており、その意味でこの世界と我々が繋がっているならば、我々もこの世界に何らかの謀略を仕掛けることができるわけである。

 向こうからやってきたとはいえ、棍棒はわたしの謀略*1にうってつけだった。棍棒は野蛮であり、そして滑稽である。今この2020年代という時代状況も滑稽さを後押ししてくれる。歴代の人類は、棍棒から始まり弓矢、剣、銃、ミサイルと、様々な武器を考案し、その威力は棍棒を遥かに凌ぐ。けれどもそれらはどれも、可笑しみという点で棍棒に敵わない。つまり、この世界を相手にするには不足している。たしかに現代の人間同士の戦争において棍棒は何の役にも立たないが、だからどうしたというのだ。わたしは人間ごときと戦う気はないし、そんな暇もない。それに、今時誰にとっても人間同士で殺し合っている場合ではないはずだ。我々はそろそろ、この世界を相手取って本当に笑える冗談を作り上げる頃合いである。おそらく人類史上初であろう棍棒展のわけのわからない冗談のような盛況ぶりは、棍棒の滑稽で強大な力を如実に証明していた。棍棒ほど世界をよく殴れるものは他にない。

 棍棒——この原始的で非力な武器こそ、今再び人類が手にすべき武器なのである!ピエイ!

✳︎1 わたしの主な謀略は、つち式という団体による里山を作る二百年計画である。詳しくは東千茅『人類堆肥化計画』(創元社)、『つち式 二〇二〇』(私家版)を参照のこと。

国民的新競技「棍棒飛ばし」をご紹介☆

 来たる2022年10月7日(金)、全日本棍棒協会は棍棒飛ばしの全国大会を開催する。なぜ平日にやるのかというと、10月7日が棍棒の日であるからだ。由来は深遠すぎてここで説明することはとてもできないものの、とにかく棍棒の日という事実の前では曜日などという概念は消し飛ばねばならない。10月7日は棍棒の日であり、したがって棍棒飛ばしの全国大会は何曜日だろうが毎年この日に開催される。

 棍棒飛ばし(KONBOU)とは、2チーム間で行われる木製の棍棒を使った競技である。攻撃側は殴打棒で被打棒を殴り飛ばし、守備側は撃墜棒で飛んできた被打棒を打ち返す、エキサイティングでエクストリームでエキセントリックなニュースポーツである。その競技性と強度は国民的競技と言って差し支えない水準に到達しつつあり、だからこそ棍棒飛ばしは国民的競技なのであって、いいかえれば棍棒飛ばしは国民的競技なのだ。全日本棍棒協会では全国大会だけでなく国内リーグの創設、世界大会の開催をも視野に入れており、その意味で棍棒飛ばしはもうほとんど人類的競技とさえいえるのである。

棍棒飛ばしは2021年8月に奈良県宇陀市大宇陀で誕生した。この競技は材料の木と広場を必要とするため都会よりも田舎のほうが圧倒的に有利といえる。ちなみに被打棒には規格があるが、殴打棒と撃墜棒は木製で棒状のものであればサイズは自由であり、それどころかむしろ自作した棍棒の使用が推奨されている。ということは、棍棒を作るための野外の作業場も必要となるのでやはり田舎が有利となる。現在多くの点で都会の後塵を拝するしかない田舎が、この競技においては格段に優位に立てるということだ。棍棒飛ばしが広まることで各地方が大いに盛り上がるばかりか、遠からず全世界を席巻するこの競技の発祥地として宇陀市が世界の中心に燦然と輝くことは火を見るより明らかである。また、競技用棍棒は堅くて頑丈な広葉樹でなければならず、したがって棍棒飛ばしは木々の新たな活用法をもたらし、人々の木々への興味を刺戟する。いいかえれば、全国の問題だらけの人工林や里山の現状に活路を拓く一つの力になりうるということだ。要するに、棍棒飛ばしをすれば大体のことはうまくいくのである。

ここで一応、これまでにもあり、これからもよくあるであろう「危ない(からやめろ)」という批判について検討しておく。まず気をつけたいのは、よくある批判は取るに足らない場合もよくあるということだ。人間が対象についての先入観や印象から、考えるより先に見当外れな発言をしてしまう場面に誰しも遭遇したことがあるはずである。くわえて、そうした声によって潰されたり萎んだり捻じ曲げられたりした物事を誰しも目にしてきたはずである。しかし一体、大した考えもなく反射的に発された声を重く受け止める必要がどこにあるのだろうか。棍棒飛ばしに対する「危ない」という声もその例に漏れない。第一、 危険な競技は他に幾つもすでに存在し(格闘技、ラグビー、アメフト、硬式野球等)多くの人々に受け入れられている。なるほど既存の競技はある程度安全面を配慮されてはいるが、それでもどんな競技にも怪我は付き物である。つまり、プレイヤーも観客もその競技の楽しさを求めて怪我のリスクを許容している 。逆にいえば、危なさが楽しさを力強く演出してさえいるのである。ともあれ、たしかに危なすぎるのは問題だ。けれども安全面でいえば、棍棒飛ばしはヘルメット、フェイスガード、手袋、脛当て、安全靴といった防具の着用を義務化ないし推奨しており、他の競技に比べて特段に危険というわけでもない。以上の理由から、「危ない(からやめろ)」という批判が全くもって考慮すべきものではないことがわかるだろう。それに、そもそも生きること自体が安全上極めて重大なリスクそのものである。危ないからといって人間が生きるのをやめているだろうか。

 全日本棍棒協会は、2022年2月に大阪北浜で『大棍棒展』を開催した。初展示にもかかわらず10日間で 1000人以上の来場があり、棍棒も100本近く売れ、多数のメディア取材も受けた。これは、棍棒にそれだけの求心力があるということでもあるが、まずもって多くの人々を惹きつけたのは棍棒の「試し殴りブース」であった。この、丸太を棍棒で殴るといういたって単純で野蛮な体験を求めて、我々主催者の予想をはるかに超える数の人間が詰めかけた。そのためあいにく騒音の問題で会期終了を待たずに中止せざるをえなかったほどだ。都会のギャラリーではこれが限界だった。しかし今我々は、棍棒先進地域こと田舎で、試し殴りどころではない、本気で殴打する機会を用意した。それが棍棒飛ばしである。

公式ルールはこちら

ZNKK X CUP 第0回全日本棍棒飛ばし選手権大会 大会要項

名称:ZNKK X CUP[ザンク・エクス・カップ] 第0回全日本棍棒飛ばし選手権大会

主催:全日本棍棒協会(ZNKK) 一般社団法人森人ネット所属

後援:宇陀市

日時:10月7日(金) 8:00〜18:00 (雨天決行、荒天中止)

会場:大宇陀健民グラウンド(大宇陀運動場)

大会方式:個人戦=基準点の獲得成否によるノックアウト方式、団体戦=総当たり方式

参加資格:大会に申込んだ個人、全日本棍棒協会に加盟し大会出場を認められたチーム

出場見込みチーム :

  1. 大宇陀神殴仏s
  2. 内子インナーチルドレン
  3. 浜村棍棒クルセイダーズ
  4. 王寺キングテンプルズ

競技参加見込み人数 : 約50名

観覧:無料(出入り自由)、飲食店等の出店あり、棍棒協会グッズの販売あり、駐車場あり


大会プログラム

0800開会式

個人戦

0830女子の部

0915男子の部

団体戦(8回戦)

1030第1、第2試合

1200昼休憩

1300第3、第4試合

1500第5、第6試合

1700閉会式


大会規定: 

【総合】

・本大会の参加費は、個人戦は1,000円(団体戦に参加するチームの選手は500円)、団体戦は1チーム5,000円とする。個人戦の参加費には殴打棒貸出料を含む。

・大会前日10/6(木)の10~16時は、設営の邪魔にならない範囲で会場のグラウンドを使って練習することができる(棍棒は自前で用意すること)。

・参加者全員に参加賞を授与する。

【個人戦】

・個人戦は各選手各回1打でその飛距離を競う。女子の部は3点、男子の部は5点から基準点を設け(3点回、5点回、……と呼称)、1点ずつ加点する。各回の失敗者が脱落することで優勝者を1名決定する。最終回において成功者が0名の場合は、再度打ち直し飛距離が最長の者を優勝とする。なお、臨界線(24m)を超える基準点10点を通過した者が複数名の場合は、その次の回で臨界線からの距離によって優勝者を決定する。

・個人戦の優勝者は優勝棍棒を授与される。

【団体戦】

・団体戦は、参加チームによる8回戦総当たり方式で行い、最も多く勝ったチームを優勝とする(大会進行に遅れが生じた場合は6回戦に変更する)。

・団体戦には、大会を通して各チーム10名までの選手を登録でき、試合ごとにその内8名(先発5名+控え3名)を選出することができる。

・団体戦における審判による号笛は、攻防の度に、攻撃開始、攻防終了——の計2回行われる。

・殴打者は約10秒以内に攻撃の準備を完了し、手を挙げて審判に合図しなければならない。また撃墜者は、それから約10秒以内に守備の準備を完了し、代表者が手を挙げて審判に合図しなければならない。なお、殴打者は自身の挙手以降に被打棒の位置を変えてはならない。

・殴打者は、審判による攻撃開始を告げる号笛から約10秒以内に殴打しなければならない。

・全ての試合の採点は審判が行う。競技者は、審判による攻防終了を告げる号笛以後に被打棒に触れてはならない。被打棒は採点後、審判によって棍棒台に投げ返される。

・攻守交替は迅速に行わなければならない(約30秒を目安とする)

・試合中の遅延行為は警告の対象になりうる。

・殴打棒および撃墜棒を自前で準備できないチームには、棍棒協会から有料で貸出す措置をとる(1試合1本100円)。

・優勝チームは優勝杯および優勝棍棒を授与されるとともに、それらを厳重に保管し次回大会で返還する義務を負う。

・競技ルールは棍棒協会が定める公式ルールを採用する。


出場申込みについて:
(1)個人戦の一般参加者を約15名募集する(団体戦は内定チームのみで行う)。
(2)事前申込み期間は8/11(木祝)~9/7(水)
 ※当日参加枠も若干数設けるが「大会のしおり」に名前は記載されない。
(3)参加希望者は下記専用フォームから申込むこと。

個人戦申込みフォーム(先着順)
https://forms.gle/BNCvkd8tCaWVpFDi8

参加上の注意点:
(1)本大会が天候その他の都合により中止となった場合は、提出されたメールアドレスに3日前までに通達する。
(2)大会当日、参加者に病気または傷害が生じた場合、大会運営側において応急処置をとるが、すべての責任は参加者にあるものとする。スポーツ傷害保険等については大会運営側で一括加入するが、参加者各人においても別途加入することが望ましい。
(3)競技会場の使用規則を守り、ゴミは全て持ち帰ること。


棍棒飛ばし公式ルール|2023年3月7日改訂(前回22年2月11日)

・2チームによる攻守入れ替わり制で行う。
・攻撃側は棍棒台に載せた被打棒を殴打棒で殴り飛ばし、守備側はそれを撃墜棒で打ち返すなどして阻止する。
・攻撃側は殴打者が1名1打ずつ飛ばし、守備側は撃墜者が複数名で待ち構える。
・勝負は各チームの合計点数で決する。

・打場の大きさは縦28m×横12m。
・棍棒台は高さ30cmの丸太もしくは角材を使用し、零線中央に固定する。

・公式戦は10回制とし、5回裏が終了した時点で休憩(ぐびぐびタイム)を挟む(10回が同点で終了した場合は勝敗が決するまで延長戦を行う)。
・公式戦は5人制とし、各チーム攻撃は5名以下、守備は4名以下の競技者によって行う。
・公式戦において控え選手は3名までとし、交代は無制限に行える(選手の登録者数は8名まで)。ただし、1回の攻撃において同じ殴打者が2度打つことはできない。
・公式戦においてはどのチームも女子選手を1名以上攻撃に参加させなければならない。女子殴打者の得点は2倍して計上する(マイナス得点は2倍しない)。

・殴打者による打ち方は、棍棒台に置いた被打棒に対して殴打棒を上から振り下ろす形に限る。それ以外の打ち方は反則であり0点となる。
・点数は、0~3.5mは0点、3.5~7mは1点、7~10.5mは2点、10.5~14mは3点、14~17.5mは4点、17.5~21mは5点、21~24.5mは6点、24.5~28mは7点というように、3.5mごとの範囲のどこで棍棒が静止したかによって採点する。なお、28m以上の場外に飛んだ場合は10点、42m以上の系外に飛んだ場合は20点とする。
・横幅を示す左右の側線の外(線外)に被打棒が飛んだ場合は0点とする。
・撃墜者に被打棒を捕獲された場合は、撃墜者が素手であれば-10点、軍手一枚でもしていれば-5点とする。
・撃墜者に被打棒を零線より後ろ(論外)に打ち返された場合、または殴打者が自ら被打棒を零線より後ろに飛ばした場合は-5点とする。
・殴打者が空振りした場合、1度目は不問とし、2連続で行った場合に-5点とする。
・殴打者が殴打した際に被打棒が著しく破損ないし折れた場合は、無効として新しい被打棒を殴打することができる。ただし殴打者が望めばそのまま採点される(採点は被打棒の最も大きな破片が静止した地点で行う)。
・殴り飛ばされた被打棒が地面で跳ねたり撃墜者に打ち返されたりした場合も、最終的に被打棒の動きが止まった地点が採点対象となる。被打棒が静止した時点をその殴打者による攻撃の完了とする。
・殴打者は自身の攻撃が完了するまで何度でも追い打ちすることができる。例えば殴打者が殴り飛ばした被打棒が撃墜者に打ち返されて殴打者の元まで飛んできた場合、殴打者もそれを打ち返すことができる。ただし殴打者は一線を越え出てはならず、殴打棒も一線を超え出てはならない。
・殴打席に立つ殴打者以外の攻撃側の選手はベンチに待機しなければならない。

・撃墜者は、棍棒台側に一線を超え出てはならず、撃墜棒も一線を超え出てはならない。また撃墜者は、殴打者が被打棒を打つまで臨界線を越えて立ってはならない。
・撃墜者は撃墜棒および身体以外を使用してはならない。また、撃墜棒を地面に差し込んで使用してはならない。なお、撃墜棒は撃墜者1名につき1本まで打場に持ち込める。
・撃墜者による守備が有効であるのは被打棒の動きが止まるまでとし、一度被打棒が静止したにもかかわらず打ち返すなどした場合は無効となる。
・被打棒が静止するまでに撃墜者が被打棒に触れてよい回数は全体で2度(2タッチ)までとし、1度(1タッチ)目は捕獲する場合を除いて撃墜棒でのみ接触が認められる。ただし、撃墜者が接触するよりも先に被打棒が地面に接触した場合、撃墜者は1度しかその被打棒に触れることができない
・マイナス得点となる被打棒の捕獲が有効となるのは、被打棒が殴打者に殴り飛ばされてから地面に接触するまでに撃墜者が捕獲した場合のみとする。また、1度目で被打棒を捕獲し損なった場合は2度目で捕獲する以外はすべて無効となる
・地面に落ちた被打棒を拾って投げる行為、撃墜棒または身体で押すように転がす行為は認めらず無効となる。
・撃墜者が被打棒を受け止め損なった場合は、その被打棒が接触されなければ到達していたであろう地点の得点が殴打者に計上される。

・選手または審判への危険行為や妨害行為はこれを禁止する(野次や罵倒は妨害行為にあたらないが、差別的な発言には警告または退場処分が課される)。
・競技者または審判以外による打場への侵入はこれを禁止する。
・悪質な反則または禁止行為を行った選手またはその他の者には警告または退場処分が課される。警告は2回目で退場処分となる。

【服装規定】

・守備時にはヘルメットと金属製フェイスガードの着用を義務付ける。その他着用できる防具は、非金属製の脛当てと軍手相当の厚さの手袋に限る。
・競技者が着用できる衣服は、上半身はインナーとTシャツ、下半身はインナーとズボンと靴下のみとする。いずれも1枚ずつまでであり、綿またはポリエステル製のものとする(女子競技者のインナーは2枚まで可)。雨天の場合のみ、上記に加えカッパを上下1枚まで着用できる。
・スパイクや先芯のある靴の着用はこれを認める。

【棍棒規定】

棍棒飛ばしで使用する棍棒はすべて木製に限り、樹種は問わない。
殴打棒と撃墜棒は棒状のものであれば形や大きさは各人の自由であるが、その競技者が片手で持ち上げられる大きさを上限とする。
被打棒は以下のような規定を設ける。

全長50cm程度
打撃部:持ち手=5:4程度
打撃部の直径6.5cm程度
持ち手の直径4.5cm程度
重さ1200g程度

なお、公式戦においては全日本棍棒協会製の公式被打棒を使用する。

【用語】

・棍棒場…棍棒飛ばしを行う場所
・打場…棍棒飛ばし用に線で区切られたコート

・零線[ぜろせん]
・点数線(一線、二線、三線…~七線)
・臨界線
・開闢線[かいびゃくせん]
・側線
(以上5つは打場図を参照のこと)

・棍棒台…殴り飛ばされる小さい棍棒(被打棒)を設置する台(丸太や角材)。

・殴打棒…棍棒台に置いた小さい棍棒(被打棒)を殴り飛ばす大きい棍棒。
・被打棒…大きい棍棒(殴打棒)によって殴り飛ばされる小さい棍棒。
・撃墜棒…飛んでくる棍棒(被打棒)を打ち返す守備用の棍棒。

・殴打者…攻撃時に殴打棒で被打棒を殴り飛ばす競技者。
・撃墜者…守備時に撃墜棒や身体で飛んでくる被打棒を阻止する競技者。

・競技者…試合に出場している者。
・選手…控え選手を含めた登録選手。

・打棒…殴り飛ばされた被打棒。

・場外…奥行き28m以上の臨界線外区域。
・天上げ[てんあげ]/昇天る[あがる]…奥行き28m以上の区域(場外)にまで被打棒を飛ばすこと。10点が入る。
※天高く棍棒を飛ばす、テンションが上がる、10点を計上する等の意味が込められている。

・系外…奥行き42m以上の開闢線外区域。
・グレートバン[Great Bang]…奥行き42m以上の区域(系外)にまで被打棒を飛ばすこと。20点が入る。

・愚打/愚棒…3点以下のしょぼい打棒。
・愚打る…側線内で四線より手前に被打棒を飛ばす、ないし打ち返されること。

・線外…側線外区域。
・駄棒る[だぼる]…線外に被打棒を飛ばす、ないし打ち返されること。0点となる。

・論外…棍棒台より後ろの零線外区域。
・トミる…被打棒を後ろ(論外)に殴り飛ばす、ないし打ち返されること。非常に不名誉なことである。殴打者が自ら2連続で飛ばした場合、または撃墜者に打ち返された場合に-5点となる。

大棍棒展を終えて

 大棍棒展が終わった。異様な密度の十日間だった。

開催にあたり、我々は65種類の木で200本超の棍棒を準備した。それらを会場に並べた様は壮観といってよく、設営を終えた我々はすでにある種の満足感を感じていた。おそらく人類史上初めてであろう棍棒の展示を開くことこそ、発足間もない全日本棍棒協会の主眼だったからだ。それで多くの人が来てくれればもちろん嬉しいが、たとえそれほど客が入らなくても大棍棒展をやったという事実がまずは何より欲しかったのである。

 けれどもいざ蓋を開けてみれば、大棍棒展は全日程で我々の予想をはるかに上回る盛況ぶりを見せた。それというのも、初日の最初の来場者二人の試し殴りをする動画がツイッターでバズったからである。もちろん棍棒協会会員の友人知人も来てくれた。が、日を追うごとにそうではない一般の来場者の割合が増え、会期中人が途切れることはなかった。我々としても棍棒の魅力には自信を持っていたものの、ここまでの人出は予想だにしていなかったし、バズってから程なくして新聞やテレビの取材もあり、本当に目が回るような十日間だった。結局、来場者数は一日あたり100人を超え、棍棒も100本近くが売れ、図録を兼ねた『棍棒入門』も500部が完売した。棍棒で頭を何度もどつかれたような衝撃の連続であった。

 我々のもとには、大棍棒展を東京やその他の地域でもやってほしいという声が沢山届いている。もちろん棍棒協会としてもゆくゆくは東京などでも盛大に棍棒展をやりたい気持ちはある。けれども、今回大阪で開催できたのは棍棒協会幹部の一人がギャラリーのオーナーで場所代が無料だったとか、折よく様々な木を譲ってもらえただとか、ありそうもない多くの偶然と協力が重なったからで、簡単に次もというわけにはいかない状況なのだ。

 すぐには二回目をできない理由は他にもある。棍棒協会は、今年10月に第一回全日本棍棒飛ばし選手権大会の開催を控えているからである。今回我々は、棍棒飛ばしに打ち込みたいところを我慢に我慢を重ねて大棍棒展を開催したのだった。そして大棍棒展が終わった今、我々には棍棒飛ばしの全国大会しか見えていない。諸君はまだ棍棒展しか知らないだろうが、棍棒飛ばしはそれを凌駕するほどの熱狂を生む競技なのであって、この大会をやらずして二回目の大棍棒展をやってる場合ではないのである(棍棒飛ばしのルールは『棍棒入門』に記載)。

 そんなわけで我々は、3月から棍棒飛ばしのチームを作りに各地に赴く予定である。まずは大阪、愛媛、鳥取、福岡あたりに行く。現地で競技用棍棒の製造と棍棒飛ばしの指導をして全国大会の成功につなげたい。で、ついでに、あくまでついでに各地で「小棍棒展」もやるかもしれない。

 つまり、次回の大棍棒展開催は少し先になる見込みだ。けれども間が空く分、第二回大棍棒展はさらに大きいものにしたいと考えている。それまでに当然我々の棍棒を作る技術は向上するはずだし、樹種も本数も増やすつもりだ。第一回よりももっと打撃力のある大棍棒展を期待していてほしい。

 最後に、これは是非とも言っておきたいことだが、棍棒や『棍棒入門』の売上げは全て里山に注ぎ込む所存である。

なぜなら、全日本棍棒協会は里山制作団体つち式の派生団体だからだ。里山に手を入れることで様々な生き物が増えることはそれ自体悦びであるし、そうすることでさらに多くの棍棒を作れもする。現に我々は大棍棒展の売上で新しいチェーンソーを買ったところである。全日本棍棒協会から棍棒などを買えば里山が盛り上がるので、今後ともよろしくお願いしまあああああああす!!!!

全日本棍棒協会オンラインショップ

 ちなみに今回の会場だったKITAHAMA N Galleryは、ホテルTHE BOLY OSAKA のギャラリーである。BOLYのスタッフの方々の全面的な協力がなければ大棍棒展はなかったと言っても過言ではない。大阪に宿泊の際はぜひBOLYへ!

大棍棒宣言

 バコン、バーン、バキッ、ポオオオン、バアアアアンッ、バチ、スカッ、ドッカアアン、齢オーバーサーティの集団が棍棒で竹を殴打している。樫、栗、桜、梅、櫟、銘々持っている棍棒が真竹を打ちのめさんと暴力の限りを尽くしている。夏真っ盛りの空の下、木々から漏れる陽光が者どもの顔に踊る。汗が噴いて笑顔で爽やか! ああ健全たる人類の微笑み! 健康第一! 愉しい暴力! ピエエエエエエイ、オラッ、オラオラオラオラオラオラッ、死ねコラァ! ボケ! カス! クソが! 奇声にも色々ある。ん? なんの意味があるのか? だって! 意味を求めて大事なものがない空洞野郎ども、ああダメダメ。意味は意義は、意図は? ん? 君に問おう、君の生きる意味は? だんまり、家族のため、自分のため、でも答えは風のなか。まあ握ってみろよ、俺たちの棍棒を。鏡の前に立って構えてみろ? どうしっくりきた? なに、しっくりこない? そんなら、君と話をしない。

 *

 元始、謎の黒い石柱に触れた我々の祖先が手にしたのは棍棒であった。棍棒が人類の手を鍛え、文明の口火を切ったのだ。棍棒で殴る——その最初の昂奮と歓喜の衝撃が絶えることなく、いまだ人類の身体に息づいていると我々は信じる。
 棍棒とは、ゲームやフィクションなどでゴブリンがよく持っているアレのことだ。が、ゴブリンとセットだからといって棍棒まで空想上のものではない。少々野蛮で雑魚い架空のキャラクターの武器に貶められる以前、棍棒は大いなる道具だった。
 しかしいま、棍棒を作っていると言うと、眉をひそめて困惑する者も多い。その後はどんなに言葉を尽くしたところで最初の反応を覆すのは難しい。里山で生活しているから杭を打ったりするのに使うのだと説明すれば、相手は一応納得する。だが、大切なのはそこではない。
 棍棒に困惑する者たちも、少年時代にはその辺にある棒を拾って振り廻した経験があるはずだ。当時、熟考も躊躇もなく、棒に自然と手が伸び、その暴力を愉んだはずである。それこそ棍棒体験に他ならない。自分はもう大人だからそんな幼稚なことはしない、などと言うのだろうか。それなら、多大な悦びを棄て去ってまで生きる動機を聞かせてほしいものだ。
 個人の歴史同様に、人類の歴史の初期にあったものだとしても、いま棍棒を使ってはならないという法はない。なるほど棍棒は原始的な道具である。けれども、だからどうしたというのだ。棍棒は、原始にして不易であり、古くなりようがない。単純明快。最初で最高。他の追随を許しはしない。もし往時に比べて現代人の棍棒使用率が下がっているとすれば——いや、間違いなく下がっているだろうが——、人類文明の歩みとはかくも貧しく的外れなものかと思わざるをえない。
 とはいえ、たしかに二〇二〇年代のいま、皆で軒下に並んで棍棒を作っている時、やや奇妙な感覚に襲われることもないではない。しかしそれは、棍棒が古臭いからではない。棍棒から遠ざかってしまっていた我々のほうがどうかしていたのだ。もはや、この素朴な力、人類の古からの熱狂を知ってしまった以上、人々の白い目を恐れて棍棒の旗を中途半端に掲揚するわけにはいかないのである。

 棍棒を謳うにあたって、暴力についても語っておく必要がある。
 いつだったか、ある年のハロウィンの日に群衆が騒いで軽トラをひっくり返す映像がSNSに流れてきた。またある時、どこかの国で暴動が起き、民衆が商店を破壊し、車に火をつける様をメディアが伝えていた。身勝手な暴力の除幕に対する非難の声は多い。なるほど暴力はときに悲しい副産物を生む。だが、場合によってはいらぬ副産物をもたらすからといって暴力そのものを否定するのは、鼠を追い出そうとして家を焼くようなものである。
 暴力は元来爽やかなものだ。有り余る力を放出するのはそれ自体痛快だし、壊すことは作ることよりも意味に絡みとられる面倒が少なく、すっきりしている。そもそも、生きることは暴力であり、死がなくてはどんな生もない。暴力の停滞が生の減退を招くのであって、逆に活発な暴力こそが溌溂な生を駆動するのである。にもかかわらず、「爽やかな暴力」が語義矛盾のように響くとすればそれは、暴力を存分に発揮する機会をあらかじめ奪われた環境に、諸君がすっかり馴致されてしまっているからだ。
 都市型の生活様式が主流となっても、人間の体内から暴力が消失することはなく、暴力は出口を要求しつづける。いきおい人々は暴力発散の代償装置を次々に編み出さずにいられない。けれどもいくらガス抜きをしたところで、所詮紛い物では暴力の期待に応えることはおぼつかない。いい加減、人間風情が考案するどんな擬似体験も、棍棒のたった一打にさえ及ばないことを認める頃合いだろう。
 親愛なる暴力よ、君のいちばん素晴らしいところ、それはけっして甘んじないことだ。我々は君を棍棒でもてなそう!

 棍棒。この最も素朴な暴力の化身は、多く木でできている。すなわち、まず立木を伐倒し、適度な長さに切り分け、それを鉈で削って持ち手を拵えることで、この殴るための棒が生まれる。作るにも暴力、できあがっても暴力だ。暴力三昧雨あられ。鬼のようなわかりやすさ、清々しさ。ちなみに鬼が持ってるのは金棒。俺の相棒は獰猛な棍棒、物騒な風貌、鬼も脱帽、共謀して暴行、秒で圧勝、相手は昏倒、再起不能。
 殴るためにある以上、当然棍棒は硬くて頑丈でなければならない。木であれば何でもいいというわけにはいかない。たとえば、国内最強レベルで硬いカシで作った棍棒は最高である。握ればずしっと重く、いかにも強そうだ。「樫」と書くくらいその威力は折り紙付きでもある。カシの棍棒で何かを殴れば、己の暴力を満足させられることはお請け合い! それに対して、日本中に阿呆みたいに植えられているスギヒノキは柔らかくて軽く、建材には便利でも棍棒には全然向かない。カシの棍棒とスギの棍棒、持った時点で違いはあきらかだ。スギの棍棒には感動がない。こんなものでは、殴ったところで傷一つ付けられはしないだろう。
 つまり棍棒は、我々に感動を与えるとともに、大問題をも突き付ける。いま、都会では慢性的に暴力の発散機会が不足している一方、里山では暴力が不足している。人が草を刈り木を伐るというかつてありふれていた暴力が減少し、もはや里山と呼べない場所も増えている状況だ。とりわけ山がひどい。人の手が入らないだけならまだしも、大量のスギヒノキが植えられたまま放置され、棍棒向きの堅木を含む広葉樹たちの生える余地がない。強い棍棒を作ろうにも、そもそも材料になる木が少なすぎるのである。
 棍棒を作りだしてから我々の木への興味はいや増し、それだけに、現在の山の惨状が余計目に付くようになった。以前から我々は山の手入れにも乗り出しているが、いい棍棒をもっと作るべく、今後ますますスギヒノキを間引いて他の木々に場所を空けていかなければならない。我々は、暴力を十全に行使できる生のために暴力を揮いつづける所存だ。くれぐれも、暴力こそが生を賦活することを忘れないようにしよう。棍棒が太古からそれを証明しているのだ。
 最後に、棍棒の取柄が暴力だけではないことも付け加えておく。棍棒のシルエットの美しさもさることながら、我々の棍棒の多くが持ち手は削ってあるものの打撃部は皮付きのままであり、それゆえ外見と中身を一本で鑑賞できるのである。それだけではない。持ち手を鉈で削る際、樹種によって硬さが異なり、それを味わいながら作るのも愉しい時間だ。できあがったら握って各樹種の感触の違いまで堪能できる。思えば、こんなに木と向き合うことはなかった。一本また一本と、棍棒を作るのがこれほど愉しいとは! まだ見ぬ木を棍棒にするのも待ち遠しい。かくなるうえは、国内全樹種、果ては世界全樹種で棍棒を製造したいところだ。
 いまや諸君も、棍棒を作りたくてうずうずしていることだろう。我々も棍棒も、いつでも君を歓迎する。

棍棒万歳!棍棒に乾杯! 棍棒に幸あれ!
我々はここに、大棍棒時代の到来を宣言する。

全日本棍棒協会

参考文献:
坂口安吾「ピエロ伝道者」
平塚らいてう「元始、女性は太陽であった」
アンドレ・ブルトン『超現実主義宣言』生田耕作訳
ロートレアモン『マルドロールの歌』栗田勇訳